Premiere Proでは普通に動くのに、After Effectsを立ち上げた途端にPCが重くなる——そんな経験はないでしょうか。実はAEは、Premiere Proとは「重さの正体」がまったく違うソフトです。本記事では、なぜAEが重いのか、何が足りていないのかを切り分ける方法と、買い替え時に見るべきスペックの目安を、当ラボの視点で整理します。
なぜAfter Effectsは重いのか
「動画編集ソフトが重い」と一括りに語られがちですが、実はPremiere ProとAfter Effects(以下AE)では、PCのどこに負荷がかかるかが大きく違います。Premiere Proが快適に動くからといってAEも快適に動くとは限らない——これが、AEに手を伸ばした多くの方がぶつかる壁の正体です。
Premiere Proとは処理の性質が違う
Premiere Proは「動画素材をタイムラインに並べて、編集点をつなぐ」ことが主役のソフトです。再生やエフェクト処理の多くをGPU(グラフィックボード)に任せており、4K素材を扱う場合はGPUのVRAM容量がボトルネックになります。これは別記事で詳しく扱っています。
一方AEは、1フレームごとにエフェクトを積み重ねて画像を生成するソフトです。テキストアニメ、モーショングラフィック、合成、トラッキング——これらはすべて、フレーム単位の計算処理の積み重ねです。この計算は、GPUよりもCPU(特にシングルコアの処理速度)に強く依存します。
AEが負荷をかける3つの場所
AEがPCに負荷をかける場所は、大きく分けて3つあります。
- CPU:エフェクトの計算処理。特に複雑なエフェクトはシングルコア性能が効きます
- メモリ(RAM):生成したフレームを「RAMプレビュー」として保持する領域
- ディスクキャッシュ:メモリから溢れたフレームを書き出す一時保管場所。SSDの速度が直結
- GPU:一部のエフェクトでのみ使われる。Premiere Proほどの主役ではない
このうち、CPU・メモリ・ディスクのいずれか1つでも詰まると、AEは重くなります。逆に言えば、AEの重さを解消するには、どこが詰まっているかを切り分けることから始まります。
重さの原因を切り分ける|タスクマネージャの見方
AEが重いと感じたら、まずはWindowsのタスクマネージャ(Macならアクティビティモニタ)を開いて、何が頭打ちになっているかを確認しましょう。Ctrl + Shift + Esc で起動できます。AEで重い作業を再現しながら、CPU・メモリ・ディスクの3つのグラフを観察してみてください。
CPUが頭打ちなら → シングルコア性能不足
CPU使用率が90〜100%に張り付いている、あるいは「論理プロセッサ別」表示で1〜2コアだけが100%になっている場合、これはシングルコア性能の不足です。AEは並列処理が苦手なエフェクトが多く、特定のコアに負荷が集中する傾向があります。CPUの世代が古い(数年前のモデル)場合は、CPU更新が効果的です。
メモリが満杯なら → RAMプレビューがフルに使えていない
メモリ使用率が90%以上に張り付いて、PCの他の動作まで重くなるようなら、RAMプレビュー用のメモリが不足しています。RAMプレビューは、生成したフレームをメモリに保持して、次の再生時に即座に呼び出す仕組み。メモリが足りないと、毎回フレームを再計算することになり、プレビューが詰まります。フルHDのモーショングラフィックなら32GB、4K案件を視野に入れるなら64GBが現実解です。
ディスクが100%なら → SSDキャッシュがボトルネック
ディスク使用率が常時100%付近に張り付いていて、AEの「ディスクキャッシュ」フォルダが頻繁にアクセスされている場合、SSDの速度がボトルネックになっています。とくに、ディスクキャッシュをCドライブ(OSと同じSSD)に置いている方は要注意です。OSの動作と取り合いになるため、両方が重くなります。
AE作業に向くPCスペックの目安
切り分けができたところで、当ラボが推奨するAE向けスペックの目安を整理します。用途別に以下の3パターンを参考にしてください。
| 用途 | CPU目安 | メモリ | SSD構成 |
|---|---|---|---|
| FHDモーション中心 | Ryzen 7 / Core i7 クラス | 32GB DDR5 | NVMe 1TB×1 |
| 4K案件+AE併用 | Core Ultra 7 / Ryzen 7 9700X 以上 | 64GB DDR5 | NVMe 1TB(OS)+NVMe 1TB(キャッシュ用) |
| プロモーション制作 | Core Ultra 9 / Ryzen 9 9950X | 64GB〜128GB DDR5 | NVMe Gen5 2TB+キャッシュ用 別建て |
CPU|シングルコア性能が高いものを選ぶ
AEではCPUのコア数よりも、1コアあたりの処理速度(シングルコア性能)が効きます。最新世代のCore Ultra 7やRyzen 7 9700Xクラスなら、シングルコア性能はおおむね十分です。型落ち世代を狙う場合も、コア数の多さに飛びつくのではなく、世代の新しいモデルを選ぶことを意識してください。
メモリ|RAMプレビュー用に32GB〜64GBが現実解
AEでフルHDのモーショングラフィックを扱うなら、メモリ32GBで十分実用的です。4K素材を絡める、または複数のコンポジションを同時に開く運用なら64GBが安心ライン。それ以上の128GBは、8K案件や本格的なポストプロダクション向けで、副業ユースなら過剰と言っていいでしょう。
SSD|キャッシュ専用にNVMe SSDを別に持つ
ここが見落とされがちなポイントです。AEは大量のディスクキャッシュを書き出すため、OSと同じSSDにキャッシュを置くと、両方の動作が遅くなります。当ラボでは、1TBのNVMe SSDを「OS用」「キャッシュ用」で別建てに持つ構成を勧めています。これだけでAEの体感速度が一段上がります。
今すぐできる「AEを軽くする」設定見直し
「ハードを買い替える前に、今のPCでできることはないか」——もっともな問いです。実は、AEの設定を見直すだけで体感速度が大きく変わるケースがあります。3つご紹介します。
メモリ環境設定の上限を引き上げる
AEは初期設定で、システム全体のメモリのうち一定割合だけを使うようになっています。編集 → 環境設定 → メモリ&パフォーマンスで、AEに割り当てるメモリ量を引き上げることで、RAMプレビューが伸びます。当ラボでは「他のアプリケーション用に確保する量」を最小限(4〜8GB程度)に絞り、残りをAEに振る運用を勧めています。
ディスクキャッシュをNVMe SSDに分ける
環境設定 → メディア&ディスクキャッシュ で、ディスクキャッシュの保存先を変更できます。先ほど触れた通り、OSと同じSSDではなく、別のNVMe SSDを指定するのが鉄則です。外付けSSDでも一定の効果はありますが、内蔵NVMeのほうが安定します。
マルチフレームレンダリングを有効化する
AE 22.0以降に搭載されたマルチフレームレンダリング(MFR)は、複数のCPUコアを使って同時に複数のフレームを処理する機能です。環境設定 → メモリ&パフォーマンス でONにできます。当ラボの検証では、MFRをONにするだけでレンダリング時間が体感30〜40%短縮されました。コア数の多いCPUを使っているなら、有効化しない手はありません。
AE作業向け|筆者おすすめのPC構成
ここからは、AE作業を快適にこなすための具体的なPC構成を、予算別に2パターンご紹介します。共通の判断軸は「CPUとメモリに予算を厚く配分する」こと。GPUに大金をかけてもAEのCPU処理は速くなりません。これが当ラボの基本姿勢です。
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予算25万円台:Ryzen 7 9700X + 32GB構成
AEを本格的に始めるなら、まず候補に挙げたいのがこの構成です。Ryzen 7 9700Xはシングルコア性能が高く、AEのエフェクト処理に向いています。GPUはRTX 5060 Tiの16GB版を選ぶことで、Premiere Proでの4K編集も視野に入る、バランス型の1台になります。
予算40万円台:Core Ultra 7 + 64GB + GPU強化構成
「AEと4K案件を本格的に両立させたい」方には、CPUをCore Ultra 7に上げ、メモリを64GBに増やし、GPUもRTX 5070 Tiクラスへ引き上げる構成を勧めます。SSDは1TBを2本搭載し、片方をAEのキャッシュ専用にする運用が理想形です。
まとめ|AEの重さは「単一スペック」では決まらない
AEの重さは、Premiere Proと違って「これさえあれば快適」という単一の答えがありません。CPU・メモリ・SSD、そして設定の3要素が組み合わさって体感が決まります。当ラボの結論を、チェックリスト形式で整理します。
ハードウェアを買い替える前に、まずは設定見直しから取り組んでみてください。それでも詰まる場面が増えてきたタイミングが、本格的な買い替えのタイミングです。段階的なアップグレードが、無理のない投資につながります。
関連記事として、4K編集でプレビューが止まる場合の対処法や、メモリ容量の選び方も用意しています。あわせて読んでみてください。